Case Study – Case Explanation

フュージングでガラスをデザインする

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建材としても採用されやすい「フュージングガラス」はガラス工芸の一技法です。まず製法を簡単にご紹介します。

板ガラス、粒状ガラス(フリット)、粉状(パウダー)、他、様々な形状のガラスを組み合わせて700~800度の高温で溶着させる技法です。電気炉を使用します。

同一のガラス同士を組み合わせて溶かす場合は特に問題は生じませんが、別々のガラスを溶かし合わせる場合、どんなガラスでも溶着できるわけではありません。それぞれのガラスは特有の「熱膨張率」を持ち、熱膨張率が合ってないガラス同士を溶かすと、溶着しているように見えていても、冷却中や冷却後に割れてしまいます。中には数日~数か月後などに割れてしまう事もあります。したがって組み合わせるガラスの選択は熱膨張率の統一が必要です。また、熱膨張率が同じでもガラス(特に色の違い)によって溶けて柔らかくなる温度(軟化点)も違います。これらの特性を見極めながらのデザイン・製作が必要です。

こちらは透明4㎜厚のベースガラス(300×300)の上に3㎜厚のカラーガラス、クリアガラスを四角形、三角形にカットし重ね、最大4層にフュージングしたものです。ガラスのコグチが立っていますので焼成温度がやや低めなのが分かります。ラインを際立たせたい時は低温焼成がきれいに仕上がります。

こちらは8㎜厚のガラスを使用していますが、やや高温焼成ですので、ガラスが熔けて沈み込んでいるのが分かります。コグチもかなり丸くなっています。

高温焼成です。ガラスが沈み込んでいるだけでなく、均一な厚みになろうと動き始めています。ガラスは液体ですので表面張力があり、高温で溶かし続けると5~6㎜程度の厚みになろうと動きます。これもガラスの大きな特徴の一つです。

クリアガラスの中にカラーガラスが完全に埋もれているように見えます。これはカラーガラスの周りに同じ厚みのクリアガラスを置き、その上にもう1層クリアガラスを重ねて溶かしたものです。テーブルトップですので均一な平面が欲しいところですが、ガラスを溶かすことで緩やかな凹凸が生じます。滑らかで、不思議な質感がキレイです。

デザインする

フュージングに適するガラスは、がらすらんど株式会社発行カタログ「The Glasswork Supplies  [HOT]・[Glass]」に記載されています。素材を知り、特性を知って頂ければデザインも容易になるのですが、専門家でなければ、それはそれで面倒な事です。

多くのデザイナーの方々は私どものショールームで多くの素材(溶かす前のガラス)や焼成サンプル(溶けた後のガラス)をご覧になり、イメージを作り、デザインに入っていきます。デザイナーのイメージを基に、ガラスの質感(透明感や、溶け具合、色など)を確認し、製作費の概算、試作(有料の場合あり)などを確認しながら進めますので安心です。


~Something Blue~ 幸せの青


青い光の奇跡的美しさから花嫁が何か1点でも青いものを身に付けて結婚式に臨めば必ず幸せになれるという古くヨーロッパから伝わる伝説。

南イタリアのカプリ島にある『青の洞窟』をモチーフとしたチャペル。神秘的な青い光に包まれたチャペルは、シーンに合わせた眺望を取り込んだ開放空間へゆっくりと変化する。披露宴やパーティー会場などニーズに応じた利用を可能にした。

チャペル全体を包み込む光の粒は、ヨーロッパの色ガラス。フュージング技法(溶着)を用いたガラスとしては、国内最大級のボリューム。

Site:東京 浅草ビューホテル27F チャペル
Architect:ヌルハウス
Project architect:徳弘 潤
施工:K&E